2012年 01月 19日
2型糖尿病における高脂肪食品摂取後の血中エンドトキシンン上昇 |
High Fat Intake Leads to Acute Postprandial Exposure to Circulating Endotoxin in Type 2 Diabetic Subjects
ALISON L. HARTE, MADHUSUDHAN C. VARMA, GYANENDRA TRIPATHI, KIRSTY C. MCGEE, NASSER M. AL-DAGHRI, OMAR S. AL-ATTAS, SHAUN SABICO, JOSEPH P. O’HARE, ANTONIO CERIELLO, PONNUSAMY SARAVANAN, SUDHESH KUMAR, PHILIP G. MCTERNAN,
Diabetes Care Publish Ahead of Print, published online December 30, 2011
DOI: 10.2337/dc11-1593
2型糖尿病に関しては、脂肪組織、炎症、インスリン抵抗性の相互関係の理解が重要です。加齢、遺伝的素因、食事などが体内での軽度の炎症に寄与することが知られています。糖尿病では治療を開始しても炎症が持続していることが知られており、脂肪組織の肥大が炎症に関与していると考えられています。さらに、腸管内グラム陰性菌の細胞壁に由来するリポ多糖類(エンドトキシン)がToll様受容体を介して脂肪組織に本来存在する免疫系を活性化することで炎症が助長される可能性が考えられます。
一方、エンドトキシン自体が糖尿病などの代謝疾患において免疫系を活性化する最初の因子である可能性も指摘されています。臨床的には、肥満、2型糖尿病、冠動脈疾患、脂肪肝などで、エンドトキシンによる免疫系活性化が認められると報告されています。また、これらの病態では、血中エンドトキシン濃度と脂質異常との間に相関が認められています。エンドトキシンが腸管から吸収される際にカイロミクロンに強い親和性を示すため、食事性脂肪とエンドトキシンの関係が想定されます。実際、高飽和脂肪酸食が健常人において血中エンドトキシン濃度を上昇させることも報告されています。
目的: 高飽和脂肪酸食摂取後の血中エンドトキシン濃度に対し、代謝状態が影響するか否かを検討する。
研究デザインと方法: 非肥満健常者9名、肥満者15名、境界型耐糖能異常12名、2型糖尿病18名に対し、高脂肪食(75g脂肪、5g炭水化物、6g蛋白質、whipping cream)を投与した。
結果: エンドトキシンの基礎値は非肥満健常者に比し境界型耐糖能異常者、2型糖尿病(非肥満健常者に比し60.6%高値 p<0.05)で有意に高値を示した。高脂肪食負荷により負荷後4時間までの時間帯において、2型糖尿病、境界型耐糖能異常、肥満者では血中エンドトキシンが上昇した。4時間の時点においては、健常者に比し2型糖尿病者では血中エンドトキシンは有意に(+125.4%、p<0.05)上昇していた。
結論: これらの研究により、高脂肪負荷後1時間の早期においても血中エンドトキシンが上昇することが判明した。特に、境界型耐糖能異常や2型糖尿病においては、かなりの上昇が認められる。2型糖尿病などの代謝異常では、健常者に比し、エンドトキシンが上昇しやすいため、頻繁な間食摂取の悪影響が出現しやすいことが示唆される。
解説> 数年前から、エンドトキシンによる軽度の炎症とインスリン抵抗性の関係が注目されています(総説 Diabetes Care 33:2277-2284, 2010)。今回の研究では2型糖尿病患者において試験食(whipping cream)摂取後4時間目においても血中エンドトキシン濃度がプラトーに達していなかったことから、著者らは摂食回数を重ねるとエンドトキシンが蓄積していく可能性を指摘しています。通常、2型糖尿病においては、食後の血糖上昇やその後の下降は比較的速やかであるため、一回の摂食量を減らし摂食回数を増加させることで食後の高血糖を防ぐよう指導する場合もあります。これに対し、今回著者らは高脂肪食品を頻回に摂取するとエンドトキシンが蓄積していく可能性が考えられとし、警鐘を鳴らしています。
whipping creamのような極端に飽和脂肪酸に富む食品の摂取を控えるようにすること自体が重要ではないでしょうか。
ALISON L. HARTE, MADHUSUDHAN C. VARMA, GYANENDRA TRIPATHI, KIRSTY C. MCGEE, NASSER M. AL-DAGHRI, OMAR S. AL-ATTAS, SHAUN SABICO, JOSEPH P. O’HARE, ANTONIO CERIELLO, PONNUSAMY SARAVANAN, SUDHESH KUMAR, PHILIP G. MCTERNAN,
Diabetes Care Publish Ahead of Print, published online December 30, 2011
DOI: 10.2337/dc11-1593
2型糖尿病に関しては、脂肪組織、炎症、インスリン抵抗性の相互関係の理解が重要です。加齢、遺伝的素因、食事などが体内での軽度の炎症に寄与することが知られています。糖尿病では治療を開始しても炎症が持続していることが知られており、脂肪組織の肥大が炎症に関与していると考えられています。さらに、腸管内グラム陰性菌の細胞壁に由来するリポ多糖類(エンドトキシン)がToll様受容体を介して脂肪組織に本来存在する免疫系を活性化することで炎症が助長される可能性が考えられます。
一方、エンドトキシン自体が糖尿病などの代謝疾患において免疫系を活性化する最初の因子である可能性も指摘されています。臨床的には、肥満、2型糖尿病、冠動脈疾患、脂肪肝などで、エンドトキシンによる免疫系活性化が認められると報告されています。また、これらの病態では、血中エンドトキシン濃度と脂質異常との間に相関が認められています。エンドトキシンが腸管から吸収される際にカイロミクロンに強い親和性を示すため、食事性脂肪とエンドトキシンの関係が想定されます。実際、高飽和脂肪酸食が健常人において血中エンドトキシン濃度を上昇させることも報告されています。
目的: 高飽和脂肪酸食摂取後の血中エンドトキシン濃度に対し、代謝状態が影響するか否かを検討する。
研究デザインと方法: 非肥満健常者9名、肥満者15名、境界型耐糖能異常12名、2型糖尿病18名に対し、高脂肪食(75g脂肪、5g炭水化物、6g蛋白質、whipping cream)を投与した。
結果: エンドトキシンの基礎値は非肥満健常者に比し境界型耐糖能異常者、2型糖尿病(非肥満健常者に比し60.6%高値 p<0.05)で有意に高値を示した。高脂肪食負荷により負荷後4時間までの時間帯において、2型糖尿病、境界型耐糖能異常、肥満者では血中エンドトキシンが上昇した。4時間の時点においては、健常者に比し2型糖尿病者では血中エンドトキシンは有意に(+125.4%、p<0.05)上昇していた。
結論: これらの研究により、高脂肪負荷後1時間の早期においても血中エンドトキシンが上昇することが判明した。特に、境界型耐糖能異常や2型糖尿病においては、かなりの上昇が認められる。2型糖尿病などの代謝異常では、健常者に比し、エンドトキシンが上昇しやすいため、頻繁な間食摂取の悪影響が出現しやすいことが示唆される。
解説> 数年前から、エンドトキシンによる軽度の炎症とインスリン抵抗性の関係が注目されています(総説 Diabetes Care 33:2277-2284, 2010)。今回の研究では2型糖尿病患者において試験食(whipping cream)摂取後4時間目においても血中エンドトキシン濃度がプラトーに達していなかったことから、著者らは摂食回数を重ねるとエンドトキシンが蓄積していく可能性を指摘しています。通常、2型糖尿病においては、食後の血糖上昇やその後の下降は比較的速やかであるため、一回の摂食量を減らし摂食回数を増加させることで食後の高血糖を防ぐよう指導する場合もあります。これに対し、今回著者らは高脂肪食品を頻回に摂取するとエンドトキシンが蓄積していく可能性が考えられとし、警鐘を鳴らしています。
whipping creamのような極端に飽和脂肪酸に富む食品の摂取を控えるようにすること自体が重要ではないでしょうか。
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by kamikubo_clinic
| 2012-01-19 22:18
| 脂質