2012年 04月 19日
肝臓脂肪、リポ蛋白質、炎症に及ぼすn6PUFAの影響 |
Effects of n6 PUFAs compared with SFAs on liver fat, lipoproteins, and inflammation in abdominal obesity: a randomized controlled trial
Helena Bjermo, David Iggman, Joel Kullberg, Ingrid Dahlman, Lars Johansson, Lena Persson, Johan Berglund, Kari Pulkki,
Samar Basu, Matti Uusitupa, Mats Rudling, Peter Arner, Tommy Cederholm, Hakan Ahlstrom, and Ulf Riserus
AJCN. First published ahead of print April 4, 2012 as doi: 10.3945/ajcn.111.030114.
非アルコール性脂肪肝(NAFLD)はメタボリックシンドロームや2型糖尿病と密接に関連しています。したがって、肝臓脂肪の減量は肥満関連疾患の予防・治療において興味あるテーマとなっています。食事性脂肪酸は肝臓あるいは内臓脂肪の蓄積に影響することが知られています。飽和脂肪酸(SFA)に比し植物性n6多価不飽和脂肪酸(PUFA)に富む食事は腹部脂肪蓄積や末梢インスリン抵抗性を減らすことが報告されています。SFAは肝臓脂肪沈着に関連していることが報告されており、逆に、n6PUFAであるリノール酸は血漿ALTと逆相関することが知られています。
リノール酸は主要なn6PUFAで、植物油、種子、ナッツ類に豊富に含まれています。SFAをPUFAで置換すると冠動脈イベントが減少します。n6PUFAによりLDLコレステロール(LDL-C)が減少します。SFAによるLDL-C増加には、LDL受容対数の減少とPGC-1βの誘導が関与していると考えられますが、PUFAによるLDL-C低下の機序は不明です。Proprotein convertase subtilisin/kexin type 9 (PCSK9)はLDL受容体分解を調節し、血漿LDL-Cの重要な調節因子です。スタチンはPCSK9を増加させるのでPCSK9阻害は重要な治療薬のターゲットとなっています。PCSK9遺伝子の機能喪失多型は血清コレステロールが15-28%低く、冠動脈疾患のリクスが47-88%低いことが報告されています。PUFAあるいはSFAの血中PCSK9に対する影響は、現在まで、報告されていません。
かつて、n6PUFAがアラキドン酸の増加をもたらし炎症を惹起する可能性が指摘されました。n3PUFAに関しては研究が多いのですが、n6PUFAに関しては対照研究がほとんどありません。この無作為化HEPFAT研究ではn6PUFAとSFAの肝脂肪含量、血清PCSK9、血清脂質、糖代謝、脂質過酸化、炎症に対する影響を腹部肥満者において検討しました。
背景: SFAを植物性PUFAで置換すると心血管系のベネフィットがあるが、肝臓脂肪に対する影響は未知である。また、n6PUFA摂取量の増加が炎症を誘発する可能性についても証明されていない。
目的: PUFAの肝脂肪、炎症、代謝異常に対する影響を検討する。
デザイン: 67名の腹部肥満を有する対象者(15%が2型糖尿病)を無作為に三大栄養素配分が同一の高植物性n6PUFA食と高SFA食(主にバターを使用)に割り付け10週間投与した。肝臓脂肪はMRIおよび核磁気陽子簀ペクトロスコピー(MRS)で評価した。PCSK9、炎症、脂肪組織での炎症関連遺伝子および脂肪合成関連遺伝子の発現も検討した。
結果: 61名が検討を完了した。体重はわずかに増加したが群間に差を認めなかった。肝臓脂肪はPUFA群で有意に低値(MRIで16%、MRSで34%の差)、PCSK9、TNF受容体2およびIL-1受容体antagonistはPUFA群で有意に低値であったが、インスリンはSFA群で高値傾向(P=0.06)であった。また、食事により血清リノール酸濃度に変化をきたした対象者(合計46名)においては、PUFA群においてインスリン、TC/HDL-C、LDL-C、中性脂肪は有意に低値を示した。脂肪組織における遺伝子発現には差を認めなかった。
結論: SFAに比し、n6PUFA摂取は体重には影響を与えなかったが、肝臓脂肪を減少させ、代謝状態を若干改善させた。高n6PUFA食によっては、炎症や酸化ストレスの指標は変化しなかった。PCSK9のダウンレギュレーションはn6PUFAによるコレステロール低下の機序のひとつである可能性が考えられる。
解説> 従来、n6PUFAがアラキドン酸の上昇を介して炎症惹起的に作用する懸念が指摘されていましたが、この研究ではn6PUFA食によっても血中アラキドン酸の上昇は認められず、逆に炎症マーカーであるTNF受容体2およびIL-1受容体antagonistは低下しました。
Helena Bjermo, David Iggman, Joel Kullberg, Ingrid Dahlman, Lars Johansson, Lena Persson, Johan Berglund, Kari Pulkki,
Samar Basu, Matti Uusitupa, Mats Rudling, Peter Arner, Tommy Cederholm, Hakan Ahlstrom, and Ulf Riserus
AJCN. First published ahead of print April 4, 2012 as doi: 10.3945/ajcn.111.030114.
非アルコール性脂肪肝(NAFLD)はメタボリックシンドロームや2型糖尿病と密接に関連しています。したがって、肝臓脂肪の減量は肥満関連疾患の予防・治療において興味あるテーマとなっています。食事性脂肪酸は肝臓あるいは内臓脂肪の蓄積に影響することが知られています。飽和脂肪酸(SFA)に比し植物性n6多価不飽和脂肪酸(PUFA)に富む食事は腹部脂肪蓄積や末梢インスリン抵抗性を減らすことが報告されています。SFAは肝臓脂肪沈着に関連していることが報告されており、逆に、n6PUFAであるリノール酸は血漿ALTと逆相関することが知られています。
リノール酸は主要なn6PUFAで、植物油、種子、ナッツ類に豊富に含まれています。SFAをPUFAで置換すると冠動脈イベントが減少します。n6PUFAによりLDLコレステロール(LDL-C)が減少します。SFAによるLDL-C増加には、LDL受容対数の減少とPGC-1βの誘導が関与していると考えられますが、PUFAによるLDL-C低下の機序は不明です。Proprotein convertase subtilisin/kexin type 9 (PCSK9)はLDL受容体分解を調節し、血漿LDL-Cの重要な調節因子です。スタチンはPCSK9を増加させるのでPCSK9阻害は重要な治療薬のターゲットとなっています。PCSK9遺伝子の機能喪失多型は血清コレステロールが15-28%低く、冠動脈疾患のリクスが47-88%低いことが報告されています。PUFAあるいはSFAの血中PCSK9に対する影響は、現在まで、報告されていません。
かつて、n6PUFAがアラキドン酸の増加をもたらし炎症を惹起する可能性が指摘されました。n3PUFAに関しては研究が多いのですが、n6PUFAに関しては対照研究がほとんどありません。この無作為化HEPFAT研究ではn6PUFAとSFAの肝脂肪含量、血清PCSK9、血清脂質、糖代謝、脂質過酸化、炎症に対する影響を腹部肥満者において検討しました。
背景: SFAを植物性PUFAで置換すると心血管系のベネフィットがあるが、肝臓脂肪に対する影響は未知である。また、n6PUFA摂取量の増加が炎症を誘発する可能性についても証明されていない。
目的: PUFAの肝脂肪、炎症、代謝異常に対する影響を検討する。
デザイン: 67名の腹部肥満を有する対象者(15%が2型糖尿病)を無作為に三大栄養素配分が同一の高植物性n6PUFA食と高SFA食(主にバターを使用)に割り付け10週間投与した。肝臓脂肪はMRIおよび核磁気陽子簀ペクトロスコピー(MRS)で評価した。PCSK9、炎症、脂肪組織での炎症関連遺伝子および脂肪合成関連遺伝子の発現も検討した。
結果: 61名が検討を完了した。体重はわずかに増加したが群間に差を認めなかった。肝臓脂肪はPUFA群で有意に低値(MRIで16%、MRSで34%の差)、PCSK9、TNF受容体2およびIL-1受容体antagonistはPUFA群で有意に低値であったが、インスリンはSFA群で高値傾向(P=0.06)であった。また、食事により血清リノール酸濃度に変化をきたした対象者(合計46名)においては、PUFA群においてインスリン、TC/HDL-C、LDL-C、中性脂肪は有意に低値を示した。脂肪組織における遺伝子発現には差を認めなかった。
結論: SFAに比し、n6PUFA摂取は体重には影響を与えなかったが、肝臓脂肪を減少させ、代謝状態を若干改善させた。高n6PUFA食によっては、炎症や酸化ストレスの指標は変化しなかった。PCSK9のダウンレギュレーションはn6PUFAによるコレステロール低下の機序のひとつである可能性が考えられる。
解説> 従来、n6PUFAがアラキドン酸の上昇を介して炎症惹起的に作用する懸念が指摘されていましたが、この研究ではn6PUFA食によっても血中アラキドン酸の上昇は認められず、逆に炎症マーカーであるTNF受容体2およびIL-1受容体antagonistは低下しました。
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by kamikubo_clinic
| 2012-04-19 14:57
| 脂質