2013年 10月 14日
成人糖尿病に推奨される栄養療法 米国糖尿病学会の見解2013 |
Nutrition Therapy Recommendations for the Management of Adults With Diabetes
ALISON B. EVERT, JACKIE L. BOUCHER, MARJORIE CYPRESS, STEPHANIE A. DUNBAR, MARION J. FRANZ, MS, ELIZABETH J. MAYER-DAVIS, JOSHUA J. NEUMILLER, PHARMD, ROBIN NWANKWO, CASSANDRA L. VERDI, PATTI URBANSKI, WILLIAM S. YANCY JR.
Diabetes Care Publish Ahead of Print, published online October 9, 2013, doi:10.2337/dc13-2042
米国糖尿病学会は、この度、成人糖尿病患者の管理において、推奨される食事療法・栄養療法に関し見解を発表しました。各患者に応じた個別的な食事栄養療法の重要性が強調されており、ここに抜粋してご紹介します。なお、前回は2008年に出されています。エビデンスレベルの高いものからA、B、C、..となっています。
<栄養療法の有効性>
栄養療法は、1型および2型糖尿病のすべての患者に対して、全体的な治療プランの構成要素として推奨される。A
糖尿病患者は、治療目標達成のために、個別的な栄養指導(可及的に糖尿病の栄養療法に詳しい管理栄養士による指導)を受けるべきである。A
・1型糖尿病患者では、カーボカウンティング法によるインスリン量調節の教育プログラムに参加することで血糖コントロールの改善がもたらされ得る。A
・投与インスリン量が固定されている患者では、炭水化物摂取のタイミングと量を一定にすることで、血糖コントロールの改善、および、低血糖リスクの減少がもたらされ得る。B
・摂取量の調整や健康的な食品の選択などの単純で容易な食事プランは、2型糖尿病で複雑な計算が困難な場合に適している可能性がある。また、このような方法は高齢者にも有用である可能性がある。C
糖尿病患者は、糖尿病診断時および必要に応じその後も、糖尿病自己管理教育を受け、また、自己管理のサポートを受けるべきである。B
糖尿病の栄養療法は医療費削減(B)、HbA1cの低下などのアウトカム改善(A)に寄与するので、栄養療法は医療保険の対象とされるべきである(E)。
<エネルギーバランス>
成人肥満2型糖尿病では、減量のために、健康的な食事パターンを維持しながら、摂取エネルギーを低下させることが推奨される。A
糖尿病患者の一部、特に発症間もない患者では、中程度の体重減少により有益な臨床的効果(高血糖改善、血圧・脂質の改善)が得られる可能性がある。中程度の体重減少を得るため、サポートを得ながらの生活習慣に対する介入(栄養療法、運動療法、および、行動変容に関するカウンセリング)が推奨される。A
<最適な栄養素比>
種々のエビデンスから、炭水化物、蛋白質、脂肪の比率に関して、ある特定の理想的な比率は存在しないことが示唆されている(B)。したがって、各患者において、現在の食事パターン、嗜好、代謝ゴールの個別的評価に基づき、比率が決定されるべきである(E)。
<食事パターン>
様々な食事パターン(食品の組み合わせ)が糖尿病管理目的で許容される。特定の食事パターンを推奨する際には、個人の嗜好(伝統、分化、宗教、健康志向、経済的側面など)および代謝ゴールが考慮されるべきである。E
(なお、食事パターンとして、地中海食、菜食、低脂肪食、低炭水化物食、DASH食が挙げられています。)
<炭水化物>
糖尿病患者における理想的な炭水化物摂取量に関してはエビデンスが十分ではない。したがって、各患者と共同してゴールを設定すべきである。C
炭水化物摂取量とインスリン量が食後血糖値に関して最も重要な影響因子であり得るため、食事プランの立案に際し、これらを考慮すべきである。A
カーボカウンティングや経験による見積もりによって摂取する炭水化物量を評価することが、血糖コントロール達成のための主要戦略であることには変わりない。B
良好な健康状態を得るため、野菜、果物、全粒穀物、豆類および乳製品から炭水化物を摂取することが勧められるべきである。特に、脂肪、砂糖、あるいは、Naを添加した食品から炭水化物を摂取することは勧められない。B
<glycemic index(GI)、glycemic load>
高GI食品を低GI食品で置換することで血糖コントロールがある程度改善する可能性がある。C
<食物繊維、全粒穀物>
糖尿病患者は、少なくとも、一般対象者に推奨されている量の食物繊維および全粒穀物を摂取すべきである。C
<砂糖によるでん粉の置換>
他の炭水化物を同カロリーの砂糖で置換しても血糖には大きな差はない可能性があるが、栄養素に富む食品の置換となる砂糖の摂取は最小量にとどめるべきである。A
<果糖>
自然食品(果物など)に含まれる果糖は同カロリーの砂糖やでん粉に比べ、血糖コントロールを改善する可能性があり(B)、過剰(>12%E)に摂取しなければ、中性脂肪に対し悪影響をおよぼすとは考えにくい(C)。
糖尿病患者は、体重増加や心血管危険因子の悪化を防ぐため、甘味飲料(清涼飲料)(高果糖コーンシロップや砂糖などのカロリーを有する甘味料を含有)の摂取を制限するか、避けるべきである。B
<人工甘味料>
カロリーのある甘味料をカロリーのないか、あるいは、少ない甘味料で置換し、他のカロリー食品を増量しなければ、総カロリーや総炭水化物摂取量の減少につながる可能性がある。B
<蛋白質>
糖尿病腎症の所見のない糖尿病患者では、最適な血糖コントロール、あるいは、心血管疾患リスクの改善のための理想的な蛋白質摂取量に関しては、これを推奨するに足る十分なエビデンスは存在しない。したがって、目標は個別化されなければならない。C
糖尿病腎症(微量アルブミン尿、および、顕性蛋白尿)を有する糖尿病患者では、通常の摂取量以下に蛋白質摂取量を減量することは、血糖状態、心血管リスク、あるいは、糸球体ろ過率低下の経過に変化を与えないので、推奨されない。A
2型糖尿病患者では、摂取蛋白質は血糖を上昇させることなくインスリン反応を増加させる。したがって、蛋白質を多く含有する炭水化物食品は低血糖の治療目的では用いるべきでない。B
<総脂肪>
糖尿病患者における理想的な総脂肪摂取量に関してはエビデンスが十分ではない。したがって、目標は個別化されるべきである(C)。脂肪の量より、その質が極めて重要である(B)。
<一価不飽和脂肪酸および多価不飽和脂肪酸>
2型糖尿病患者では、地中海式の一価不飽和脂肪酸に富む食事が血糖コントロールおよび心血管危険因子を改善する可能性があるため、低脂肪高炭水化物食に対する有用な代替として推奨され得るものである。B
<n3多価不飽和脂肪酸>
糖尿病患者においては、エビデンスは、心血管イベントの予防および治療目的でn3多価不飽和脂肪酸(EPAおよびDHA)のサプリメントを推奨することは支持しない。A
長鎖n3多価不飽和脂肪酸(EPAおよびDHA、油の多い魚)および、αリノレン酸(ALA)を含有する食品の摂取を増やすことは、観察研究において、リポ蛋白質の改善効果と心疾患の予防効果を有し、また、健康アウトカムの改善と関連していることから、一般対象者と同様に、糖尿病患者でも推奨される。B
糖尿病患者においても、一般対象者と同様に、週に少なくとも2回以上、魚(特に油の多い魚)を摂取することを推奨する。B
<飽和脂肪、食事性コレステロール、トランス脂肪>
糖尿病患者に推奨される、飽和脂肪、コレステロール、トランス脂肪の摂取量は、一般対象者のそれと同じである。C
<植物スタノール、植物ステロール>
脂質異常症を伴う糖尿病患者では、強化食品に含有されるような1.6~3g/日の植物スタノール、植物ステロールの摂取により総およびLDLコレステロールが軽度に低下する可能性がある。C
<微量栄養素、ハーブサプリメント>
糖尿病患者では、欠乏がなければ、ビタミンやミネラルのサプリメントの有用性に関する明らかなエビデンスはない。C
・ビタミンE、C およびカロテンなどの抗酸化物質の日常的なサプリメント投与は、有用性に関するエビデンスがなく長期的安全性に関する懸念があることから勧められない。A
・クロミウム、マグネシウム、ビタミンDなどの微量栄養素を糖尿病患者の血糖コントロール改善の目的で日常的に使用することを支持する十分なエビデンスはない。C
・糖尿病治療にシナモンやその他のハーブを使用することを支持する十分なエビデンスはない。C
すべての微量栄養素の摂取基準に合致するように、食品の選択を含めた食事プランを個別的に作成することが推奨される。E
<アルコール>
糖尿病患者が飲酒する場合には、適量(成人女性では1日1杯、あるいは、それ以下、成人男性では1日2杯、あるいは、それ以下)にとどめるべきである。E
糖尿病患者では、飲酒により、特にインスリンあるいはインスリン分泌促進薬を使用中の場合、遷延性低血糖の危険性が増加する可能性がある。遷延性低血糖の自覚と対処法に関する教育と認識が求められる。C
<ナトリウム>
一般対象者でのNa摂取量を2300mg/日以下にするという推奨は糖尿病患者にも適合する。B
高血圧を合併する糖尿病患者では、更なるNa摂取制限は個別化されるべきである。B
ALISON B. EVERT, JACKIE L. BOUCHER, MARJORIE CYPRESS, STEPHANIE A. DUNBAR, MARION J. FRANZ, MS, ELIZABETH J. MAYER-DAVIS, JOSHUA J. NEUMILLER, PHARMD, ROBIN NWANKWO, CASSANDRA L. VERDI, PATTI URBANSKI, WILLIAM S. YANCY JR.
Diabetes Care Publish Ahead of Print, published online October 9, 2013, doi:10.2337/dc13-2042
米国糖尿病学会は、この度、成人糖尿病患者の管理において、推奨される食事療法・栄養療法に関し見解を発表しました。各患者に応じた個別的な食事栄養療法の重要性が強調されており、ここに抜粋してご紹介します。なお、前回は2008年に出されています。エビデンスレベルの高いものからA、B、C、..となっています。
<栄養療法の有効性>
栄養療法は、1型および2型糖尿病のすべての患者に対して、全体的な治療プランの構成要素として推奨される。A
糖尿病患者は、治療目標達成のために、個別的な栄養指導(可及的に糖尿病の栄養療法に詳しい管理栄養士による指導)を受けるべきである。A
・1型糖尿病患者では、カーボカウンティング法によるインスリン量調節の教育プログラムに参加することで血糖コントロールの改善がもたらされ得る。A
・投与インスリン量が固定されている患者では、炭水化物摂取のタイミングと量を一定にすることで、血糖コントロールの改善、および、低血糖リスクの減少がもたらされ得る。B
・摂取量の調整や健康的な食品の選択などの単純で容易な食事プランは、2型糖尿病で複雑な計算が困難な場合に適している可能性がある。また、このような方法は高齢者にも有用である可能性がある。C
糖尿病患者は、糖尿病診断時および必要に応じその後も、糖尿病自己管理教育を受け、また、自己管理のサポートを受けるべきである。B
糖尿病の栄養療法は医療費削減(B)、HbA1cの低下などのアウトカム改善(A)に寄与するので、栄養療法は医療保険の対象とされるべきである(E)。
<エネルギーバランス>
成人肥満2型糖尿病では、減量のために、健康的な食事パターンを維持しながら、摂取エネルギーを低下させることが推奨される。A
糖尿病患者の一部、特に発症間もない患者では、中程度の体重減少により有益な臨床的効果(高血糖改善、血圧・脂質の改善)が得られる可能性がある。中程度の体重減少を得るため、サポートを得ながらの生活習慣に対する介入(栄養療法、運動療法、および、行動変容に関するカウンセリング)が推奨される。A
<最適な栄養素比>
種々のエビデンスから、炭水化物、蛋白質、脂肪の比率に関して、ある特定の理想的な比率は存在しないことが示唆されている(B)。したがって、各患者において、現在の食事パターン、嗜好、代謝ゴールの個別的評価に基づき、比率が決定されるべきである(E)。
<食事パターン>
様々な食事パターン(食品の組み合わせ)が糖尿病管理目的で許容される。特定の食事パターンを推奨する際には、個人の嗜好(伝統、分化、宗教、健康志向、経済的側面など)および代謝ゴールが考慮されるべきである。E
(なお、食事パターンとして、地中海食、菜食、低脂肪食、低炭水化物食、DASH食が挙げられています。)
<炭水化物>
糖尿病患者における理想的な炭水化物摂取量に関してはエビデンスが十分ではない。したがって、各患者と共同してゴールを設定すべきである。C
炭水化物摂取量とインスリン量が食後血糖値に関して最も重要な影響因子であり得るため、食事プランの立案に際し、これらを考慮すべきである。A
カーボカウンティングや経験による見積もりによって摂取する炭水化物量を評価することが、血糖コントロール達成のための主要戦略であることには変わりない。B
良好な健康状態を得るため、野菜、果物、全粒穀物、豆類および乳製品から炭水化物を摂取することが勧められるべきである。特に、脂肪、砂糖、あるいは、Naを添加した食品から炭水化物を摂取することは勧められない。B
<glycemic index(GI)、glycemic load>
高GI食品を低GI食品で置換することで血糖コントロールがある程度改善する可能性がある。C
<食物繊維、全粒穀物>
糖尿病患者は、少なくとも、一般対象者に推奨されている量の食物繊維および全粒穀物を摂取すべきである。C
<砂糖によるでん粉の置換>
他の炭水化物を同カロリーの砂糖で置換しても血糖には大きな差はない可能性があるが、栄養素に富む食品の置換となる砂糖の摂取は最小量にとどめるべきである。A
<果糖>
自然食品(果物など)に含まれる果糖は同カロリーの砂糖やでん粉に比べ、血糖コントロールを改善する可能性があり(B)、過剰(>12%E)に摂取しなければ、中性脂肪に対し悪影響をおよぼすとは考えにくい(C)。
糖尿病患者は、体重増加や心血管危険因子の悪化を防ぐため、甘味飲料(清涼飲料)(高果糖コーンシロップや砂糖などのカロリーを有する甘味料を含有)の摂取を制限するか、避けるべきである。B
<人工甘味料>
カロリーのある甘味料をカロリーのないか、あるいは、少ない甘味料で置換し、他のカロリー食品を増量しなければ、総カロリーや総炭水化物摂取量の減少につながる可能性がある。B
<蛋白質>
糖尿病腎症の所見のない糖尿病患者では、最適な血糖コントロール、あるいは、心血管疾患リスクの改善のための理想的な蛋白質摂取量に関しては、これを推奨するに足る十分なエビデンスは存在しない。したがって、目標は個別化されなければならない。C
糖尿病腎症(微量アルブミン尿、および、顕性蛋白尿)を有する糖尿病患者では、通常の摂取量以下に蛋白質摂取量を減量することは、血糖状態、心血管リスク、あるいは、糸球体ろ過率低下の経過に変化を与えないので、推奨されない。A
2型糖尿病患者では、摂取蛋白質は血糖を上昇させることなくインスリン反応を増加させる。したがって、蛋白質を多く含有する炭水化物食品は低血糖の治療目的では用いるべきでない。B
<総脂肪>
糖尿病患者における理想的な総脂肪摂取量に関してはエビデンスが十分ではない。したがって、目標は個別化されるべきである(C)。脂肪の量より、その質が極めて重要である(B)。
<一価不飽和脂肪酸および多価不飽和脂肪酸>
2型糖尿病患者では、地中海式の一価不飽和脂肪酸に富む食事が血糖コントロールおよび心血管危険因子を改善する可能性があるため、低脂肪高炭水化物食に対する有用な代替として推奨され得るものである。B
<n3多価不飽和脂肪酸>
糖尿病患者においては、エビデンスは、心血管イベントの予防および治療目的でn3多価不飽和脂肪酸(EPAおよびDHA)のサプリメントを推奨することは支持しない。A
長鎖n3多価不飽和脂肪酸(EPAおよびDHA、油の多い魚)および、αリノレン酸(ALA)を含有する食品の摂取を増やすことは、観察研究において、リポ蛋白質の改善効果と心疾患の予防効果を有し、また、健康アウトカムの改善と関連していることから、一般対象者と同様に、糖尿病患者でも推奨される。B
糖尿病患者においても、一般対象者と同様に、週に少なくとも2回以上、魚(特に油の多い魚)を摂取することを推奨する。B
<飽和脂肪、食事性コレステロール、トランス脂肪>
糖尿病患者に推奨される、飽和脂肪、コレステロール、トランス脂肪の摂取量は、一般対象者のそれと同じである。C
<植物スタノール、植物ステロール>
脂質異常症を伴う糖尿病患者では、強化食品に含有されるような1.6~3g/日の植物スタノール、植物ステロールの摂取により総およびLDLコレステロールが軽度に低下する可能性がある。C
<微量栄養素、ハーブサプリメント>
糖尿病患者では、欠乏がなければ、ビタミンやミネラルのサプリメントの有用性に関する明らかなエビデンスはない。C
・ビタミンE、C およびカロテンなどの抗酸化物質の日常的なサプリメント投与は、有用性に関するエビデンスがなく長期的安全性に関する懸念があることから勧められない。A
・クロミウム、マグネシウム、ビタミンDなどの微量栄養素を糖尿病患者の血糖コントロール改善の目的で日常的に使用することを支持する十分なエビデンスはない。C
・糖尿病治療にシナモンやその他のハーブを使用することを支持する十分なエビデンスはない。C
すべての微量栄養素の摂取基準に合致するように、食品の選択を含めた食事プランを個別的に作成することが推奨される。E
<アルコール>
糖尿病患者が飲酒する場合には、適量(成人女性では1日1杯、あるいは、それ以下、成人男性では1日2杯、あるいは、それ以下)にとどめるべきである。E
糖尿病患者では、飲酒により、特にインスリンあるいはインスリン分泌促進薬を使用中の場合、遷延性低血糖の危険性が増加する可能性がある。遷延性低血糖の自覚と対処法に関する教育と認識が求められる。C
<ナトリウム>
一般対象者でのNa摂取量を2300mg/日以下にするという推奨は糖尿病患者にも適合する。B
高血圧を合併する糖尿病患者では、更なるNa摂取制限は個別化されるべきである。B
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by kamikubo_clinic
| 2013-10-14 18:03
| 炭水化物