2015年 12月 17日
低脂肪食は減量目的では推奨されない:系統的レビューおよびメタ解析 |
Effect of low-fat diet interventions versus other diet interventions on long-term weight change in adults: a systematic review and meta-analysis
Deirdre K Tobias, Mu Chen, JoAnn E Manson, David S Ludwig, Walter Willett, Frank B Hu
Lancet Diabetes Endocrinol 2015
Published Online October 30, 2015
わが国を含む先進国では肥満者の割合が増加しており、長期的な体重管理が重要です。減量や体重維持目的での食事療法において、その三大栄養素の割合が議論の的になってきました。脂質は1g当たり9kcalと炭水化物やたんぱく質に比し多くのエネルギーを有しているため、脂質摂取量の減量により総エネルギー摂取が大きく減少すると想定されてきました。しかし、無作為化臨床試験の結果は必ずしも低脂肪食が長期的な体重減少をもたらすわけではないことを示してきました。
今回、ハーバード大学公衆衛生学部のHu教授らのグループから、体重に対する低脂肪食の効果を1年以上にわたり他の食事療法と比較した多数の介入試験についてメタ解析および系統的レビューが報告されました。
背景: 無作為化臨床試験(RCT)および最近のレビューでは、長期的減量の観点から低脂肪食の有効性に関して必ずしも一致した見解が得られておらず、長年の議論の対象である。今回、通常食や低炭水化物食およびその他の高脂肪食に比し、低脂肪食がより大きな体重減少をもたらすか否かにつき、広範なRCTからのエビデンスをまとめることを目的とした。
方法: 2014年7月末までの種々のデータベースから、1年以上低脂肪食と高脂肪食を比較したRCTを抽出し、メタ解析を行った。
結果: 37の研究が解析目的に合致した。減量目的の研究では、低脂肪食に比し、低炭水化物食が有意な減量効果を示した(平均1.15kg)。低脂肪食は対象者の通常の食事に比べると減量効果を示したが(平均-5.41kg)、他の高脂肪食との比較では、減量効果において有意な差を示さなかった。減量を目的としない試験および体重維持を目的とした試験においても、低脂肪食と高脂肪食は同等の体重減少を来し、低脂肪食は通常の食事と比較した場合においてのみ、より大きな体重減少を来した。体重減少試験においては、脂質によるエネルギー摂取が5%以上異なる場合(平均-1.04kg)、および、血清中性脂肪が5.3 mg/dL以上異なる場合(平均-1.38kg)に、高脂肪食が有意に大きな体重減少をもたらした。
解釈: RCTに基づくエビデンスからは、長期的減量において低脂肪食が他の食事療法に比し有用とはいえない。
<解説> 減量のためには低脂肪食と低炭水化物食のいずれがよいのか、長年、議論されてきました。今回の大規模なメタ解析で、低脂肪食に有用性はなく、むしろ低炭水化物高脂肪食の方が、若干、より大きな体重減少をもたらすということで決着がついたと考えられます。
著者らは考察の中で、健康食のガイドラインにおいて、減量を目的として低脂肪食を推奨することは中止すべきであるとしています。なお、血清中性脂肪は炭水化物摂取量のマーカーで、これがある程度以上低下することは、ある程度以上の低炭水化物高脂肪食が達成されていることを示していると考えられます。
Deirdre K Tobias, Mu Chen, JoAnn E Manson, David S Ludwig, Walter Willett, Frank B Hu
Lancet Diabetes Endocrinol 2015
Published Online October 30, 2015
わが国を含む先進国では肥満者の割合が増加しており、長期的な体重管理が重要です。減量や体重維持目的での食事療法において、その三大栄養素の割合が議論の的になってきました。脂質は1g当たり9kcalと炭水化物やたんぱく質に比し多くのエネルギーを有しているため、脂質摂取量の減量により総エネルギー摂取が大きく減少すると想定されてきました。しかし、無作為化臨床試験の結果は必ずしも低脂肪食が長期的な体重減少をもたらすわけではないことを示してきました。
今回、ハーバード大学公衆衛生学部のHu教授らのグループから、体重に対する低脂肪食の効果を1年以上にわたり他の食事療法と比較した多数の介入試験についてメタ解析および系統的レビューが報告されました。
背景: 無作為化臨床試験(RCT)および最近のレビューでは、長期的減量の観点から低脂肪食の有効性に関して必ずしも一致した見解が得られておらず、長年の議論の対象である。今回、通常食や低炭水化物食およびその他の高脂肪食に比し、低脂肪食がより大きな体重減少をもたらすか否かにつき、広範なRCTからのエビデンスをまとめることを目的とした。
方法: 2014年7月末までの種々のデータベースから、1年以上低脂肪食と高脂肪食を比較したRCTを抽出し、メタ解析を行った。
結果: 37の研究が解析目的に合致した。減量目的の研究では、低脂肪食に比し、低炭水化物食が有意な減量効果を示した(平均1.15kg)。低脂肪食は対象者の通常の食事に比べると減量効果を示したが(平均-5.41kg)、他の高脂肪食との比較では、減量効果において有意な差を示さなかった。減量を目的としない試験および体重維持を目的とした試験においても、低脂肪食と高脂肪食は同等の体重減少を来し、低脂肪食は通常の食事と比較した場合においてのみ、より大きな体重減少を来した。体重減少試験においては、脂質によるエネルギー摂取が5%以上異なる場合(平均-1.04kg)、および、血清中性脂肪が5.3 mg/dL以上異なる場合(平均-1.38kg)に、高脂肪食が有意に大きな体重減少をもたらした。
解釈: RCTに基づくエビデンスからは、長期的減量において低脂肪食が他の食事療法に比し有用とはいえない。
<解説> 減量のためには低脂肪食と低炭水化物食のいずれがよいのか、長年、議論されてきました。今回の大規模なメタ解析で、低脂肪食に有用性はなく、むしろ低炭水化物高脂肪食の方が、若干、より大きな体重減少をもたらすということで決着がついたと考えられます。
著者らは考察の中で、健康食のガイドラインにおいて、減量を目的として低脂肪食を推奨することは中止すべきであるとしています。なお、血清中性脂肪は炭水化物摂取量のマーカーで、これがある程度以上低下することは、ある程度以上の低炭水化物高脂肪食が達成されていることを示していると考えられます。
by kamikubo_clinic
| 2015-12-17 21:00
| 脂質