2012年 01月 31日
脂肪、蛋白質、炭水化物量の異なる4種の減量食が体脂肪、除脂肪体重、内臓脂肪、肝臓脂肪に及ぼす影響 |
Effects of 4 weight-loss diets differing in fat, protein, and carbohydrate on fat mass, lean mass, visceral adipose tissue, and hepatic fat: results from the POUNDS LOST trial
Russell J de Souza, George A Bray, Vincent J Carey, Kevin D Hall, Meryl S LeBoff, Catherine M Loria, Nancy M Laranjo, Frank M Sacks, and Steven R Smith
Am J Clin Nutr. First published ahead of print January 18, 2012 as doi: 10.3945/ajcn.111.026328.
内臓脂肪は肝臓に脂肪酸を供給することで肝臓への脂肪沈着(脂肪肝など)を引き起こし、様々な代謝異常をもたらします。現在まで、どのような栄養素配分が内臓脂肪や肝臓脂肪の減少に有効であるかは、必ずしも、明らかではありませんでした。今回、このグループは蛋白質量、脂肪量、炭水化物量の異なる4種類の減エネルギー食が体重、内臓脂肪、肝臓脂肪などにどのような影響を及ぼすかを検討しました。N Engl J Med 2009;360:859-73に報告されたPOUNDS LOST研究の詳報です。
背景: 減量は体脂肪や除脂肪体重の減少をもたらしますが、これらの変化が食事の栄養素配分によりどのような影響を受けるかは不明です。
目的: 脂肪、蛋白質、炭水化物量の異なる減エネルギー食が全脂肪、内臓脂肪、肝臓脂肪、除脂肪体重に異なる影響を及ぼすかどうか検討した。
デザイン: 4種類の食事に無作為に割り当てられた参加者の中で、424名で二重エネルギーX線吸収法で体脂肪量、除脂肪体重を、165名でCT法にて腹部脂肪、肝臓脂肪を測定した。食事療法開始時からの変化と蛋白質量(25%と15%)、脂肪量(40%と20%)および炭水化物量(35~65%)との関連を検討した。
結果: 6ヶ月の時点で参加者は4.2±0.3 kg(12.4%)の体脂肪および2.1±0.3 kg(3.5%)の除脂肪体重を失ったが、25%と15%の蛋白質量、40%と20%の脂肪量、65%と35%の炭水化物量の間には有意差を認めなかった。参加者は2.3±0.2 kg(13.8%)の腹部脂肪、1.5±0.2 kg (13.6%)の皮下脂肪、0.9±0.1 kg (16.1%)の内臓脂肪を失ったが、食事による有意差は認めなかった。女性は男性に比し、総脂肪に比べてより多くの内臓脂肪を減らすことができた。参加者は2年後までに減少分の約40%を再取得したが、食事による有意差は認められなかった。体重減少と同時に肝臓脂肪も減少したが、食事による差は認められなかった。食事のゴールは十分には達成されず、自己申告では6ヶ月の時点で蛋白質の差は2%、脂肪の差は8%、炭水化物の差は14%、2年の時点ではそれぞれ1%、7%と10%に過ぎなかった。
結論: 全ての食事療法において除脂肪体重に比しより多くの体脂肪が減少したが、体組成、腹部脂肪、肝臓脂肪の変化には栄養素配分による差は認められなかった。
解説> 二重エネルギーX線吸収法やCT法を使用して、長期間の食事介入が各部位の脂肪量にどのような影響を与えるかを検討した興味深い研究です。結果は、エネルギーが同等であれば栄養素配分の差異は体脂肪、腹部脂肪、肝臓脂肪の減少には明らかな影響をおよぼさないというものでした。しかしながら、他の多くの研究同様、当初意図した各栄養素摂取量の差を達成することができず、時間と共に参加者が徐々に自分の通常の食事に戻っていくことが示されています。客観的な蛋白質摂取量の評価法である尿中の窒素排泄量でも、意図した蛋白質摂取量の差が得られなかったことが示されています。平均的な意味では、極端な食事療法を長期的に行うことが困難であることを示していると考えられます。
Russell J de Souza, George A Bray, Vincent J Carey, Kevin D Hall, Meryl S LeBoff, Catherine M Loria, Nancy M Laranjo, Frank M Sacks, and Steven R Smith
Am J Clin Nutr. First published ahead of print January 18, 2012 as doi: 10.3945/ajcn.111.026328.
内臓脂肪は肝臓に脂肪酸を供給することで肝臓への脂肪沈着(脂肪肝など)を引き起こし、様々な代謝異常をもたらします。現在まで、どのような栄養素配分が内臓脂肪や肝臓脂肪の減少に有効であるかは、必ずしも、明らかではありませんでした。今回、このグループは蛋白質量、脂肪量、炭水化物量の異なる4種類の減エネルギー食が体重、内臓脂肪、肝臓脂肪などにどのような影響を及ぼすかを検討しました。N Engl J Med 2009;360:859-73に報告されたPOUNDS LOST研究の詳報です。
背景: 減量は体脂肪や除脂肪体重の減少をもたらしますが、これらの変化が食事の栄養素配分によりどのような影響を受けるかは不明です。
目的: 脂肪、蛋白質、炭水化物量の異なる減エネルギー食が全脂肪、内臓脂肪、肝臓脂肪、除脂肪体重に異なる影響を及ぼすかどうか検討した。
デザイン: 4種類の食事に無作為に割り当てられた参加者の中で、424名で二重エネルギーX線吸収法で体脂肪量、除脂肪体重を、165名でCT法にて腹部脂肪、肝臓脂肪を測定した。食事療法開始時からの変化と蛋白質量(25%と15%)、脂肪量(40%と20%)および炭水化物量(35~65%)との関連を検討した。
結果: 6ヶ月の時点で参加者は4.2±0.3 kg(12.4%)の体脂肪および2.1±0.3 kg(3.5%)の除脂肪体重を失ったが、25%と15%の蛋白質量、40%と20%の脂肪量、65%と35%の炭水化物量の間には有意差を認めなかった。参加者は2.3±0.2 kg(13.8%)の腹部脂肪、1.5±0.2 kg (13.6%)の皮下脂肪、0.9±0.1 kg (16.1%)の内臓脂肪を失ったが、食事による有意差は認めなかった。女性は男性に比し、総脂肪に比べてより多くの内臓脂肪を減らすことができた。参加者は2年後までに減少分の約40%を再取得したが、食事による有意差は認められなかった。体重減少と同時に肝臓脂肪も減少したが、食事による差は認められなかった。食事のゴールは十分には達成されず、自己申告では6ヶ月の時点で蛋白質の差は2%、脂肪の差は8%、炭水化物の差は14%、2年の時点ではそれぞれ1%、7%と10%に過ぎなかった。
結論: 全ての食事療法において除脂肪体重に比しより多くの体脂肪が減少したが、体組成、腹部脂肪、肝臓脂肪の変化には栄養素配分による差は認められなかった。
解説> 二重エネルギーX線吸収法やCT法を使用して、長期間の食事介入が各部位の脂肪量にどのような影響を与えるかを検討した興味深い研究です。結果は、エネルギーが同等であれば栄養素配分の差異は体脂肪、腹部脂肪、肝臓脂肪の減少には明らかな影響をおよぼさないというものでした。しかしながら、他の多くの研究同様、当初意図した各栄養素摂取量の差を達成することができず、時間と共に参加者が徐々に自分の通常の食事に戻っていくことが示されています。客観的な蛋白質摂取量の評価法である尿中の窒素排泄量でも、意図した蛋白質摂取量の差が得られなかったことが示されています。平均的な意味では、極端な食事療法を長期的に行うことが困難であることを示していると考えられます。
by kamikubo_clinic
| 2012-01-31 15:04