2012年 01月 15日
短鎖脂肪酸はGPR43(FFAR2)を介してGLP-1分泌を促進する |
Short-Chain Fatty Acids Stimulate Glucagon-Like Peptide-1 Secretion via the G-Protein–Coupled Receptor FFAR2
Gwen Tolhurst, Helen Heffron, Yu Shan Lam, Helen E. Parker, Abdella M. Habib, Eleftheria Diakogiannaki, Jennifer Cameron, Johannes Grosse, Frank Reimann, and Fiona M. Gribble
Diabetes published ahead of print December 21, 2011, doi:10.2337/db11-1019
まとめ: 近年、消化管内の微生物が宿主の代謝状態におよぼす影響に関心が集まっています。上部消化管で消化されない"prebiotics"が微生物による発酵で短鎖脂肪酸に変化し、インスリン分泌や食欲の調節に関与している消化管ホルモンの分泌に影響しうることが想定されている。今回、結腸細胞培養系において短鎖脂肪酸がインクレチンであるGLP-1の分泌を促進することを示した。定量的PCRによりGLP-1分泌L細胞に短鎖脂肪酸受容体であるgpr43(ffar2)、gpr41(ffar3)が多く発現していること、また、従来から指摘されているようにGPR43がGq情報伝達とカップルしておりL細胞でも細胞内Ca++濃度を上昇させることを示した。gpr43あるいはgpr41ノックアウトマウスでは、in vitro、in vivoとも短鎖脂肪酸によるGPL-1分泌刺激が減少していること、また、耐糖能が低下していることを示した。これらの結果は短鎖脂肪酸およびその受容体が糖尿病治療において有力な標的になりうることを示唆するものである。
解説> prebioticsは、1995年M. Roberfroldにより、消化されない食品成分で消化管微生物の増殖や活性に影響することで宿主の健康に有用な効果をもたらす物質と定義されています。実際には、水溶性食物繊維であるオリゴフルクトースやイヌリンなどが該当します。
消化管L細胞は食欲抑制作用を有するGLP-1やペプタイドYYを分泌します。また、GLP-1はインスリン分泌を促進するインクレチンでもあります。L細胞は糖質、アミノ酸、長鎖脂肪酸などの刺激に反応しGLP-1分泌を増加させます。しかしながら、L細胞はこれらの栄養素がもはやそれほど存在しない結腸上皮に最も多く存在します。一方、消化管内の微生物による発酵で産生される短鎖脂肪酸は結腸内に多く存在します。60%程度が酢酸(C2)、25%がプロピオン酸(C3)、15%が酪酸(C4)とされています。これらの短鎖脂肪酸自体や食物繊維はGLP-1やペプタイドYYの分泌を刺激することが知られています。
短鎖脂肪酸は、局所で栄養源になるほか、G蛋白共役受容体(GPR)を活性化させ細胞機能に影響します。GPR43はC2、C3、GPR41はC3-C5短鎖脂肪酸に親和性が高いとされています。今回の研究ではGqと共役したGPR43が短鎖脂肪酸によるGLP-1分泌促進に関与していることが示されました。すでにGPR119が膵β細胞と消化管L細胞に存在し、長鎖脂肪酸のインスリン、およびGLP-1分泌促進作用を仲介することが判明しており、数々の新薬が開発中です。また、短鎖脂肪酸によるGPR43活性化は潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患にも関与していることが示されています。さらに、GPR43、GPR41は脂肪細胞にも存在し、その機能に影響することも知られています。なお、論文中でこのグループがGPR43、GPR41が膵β、α細胞にも存在することを見出したと記されています。
prebioticsを含む食品、腸管微生物(probiotics)に関する研究には今後とも注目が必要と考えられます。
Gwen Tolhurst, Helen Heffron, Yu Shan Lam, Helen E. Parker, Abdella M. Habib, Eleftheria Diakogiannaki, Jennifer Cameron, Johannes Grosse, Frank Reimann, and Fiona M. Gribble
Diabetes published ahead of print December 21, 2011, doi:10.2337/db11-1019
まとめ: 近年、消化管内の微生物が宿主の代謝状態におよぼす影響に関心が集まっています。上部消化管で消化されない"prebiotics"が微生物による発酵で短鎖脂肪酸に変化し、インスリン分泌や食欲の調節に関与している消化管ホルモンの分泌に影響しうることが想定されている。今回、結腸細胞培養系において短鎖脂肪酸がインクレチンであるGLP-1の分泌を促進することを示した。定量的PCRによりGLP-1分泌L細胞に短鎖脂肪酸受容体であるgpr43(ffar2)、gpr41(ffar3)が多く発現していること、また、従来から指摘されているようにGPR43がGq情報伝達とカップルしておりL細胞でも細胞内Ca++濃度を上昇させることを示した。gpr43あるいはgpr41ノックアウトマウスでは、in vitro、in vivoとも短鎖脂肪酸によるGPL-1分泌刺激が減少していること、また、耐糖能が低下していることを示した。これらの結果は短鎖脂肪酸およびその受容体が糖尿病治療において有力な標的になりうることを示唆するものである。
解説> prebioticsは、1995年M. Roberfroldにより、消化されない食品成分で消化管微生物の増殖や活性に影響することで宿主の健康に有用な効果をもたらす物質と定義されています。実際には、水溶性食物繊維であるオリゴフルクトースやイヌリンなどが該当します。
消化管L細胞は食欲抑制作用を有するGLP-1やペプタイドYYを分泌します。また、GLP-1はインスリン分泌を促進するインクレチンでもあります。L細胞は糖質、アミノ酸、長鎖脂肪酸などの刺激に反応しGLP-1分泌を増加させます。しかしながら、L細胞はこれらの栄養素がもはやそれほど存在しない結腸上皮に最も多く存在します。一方、消化管内の微生物による発酵で産生される短鎖脂肪酸は結腸内に多く存在します。60%程度が酢酸(C2)、25%がプロピオン酸(C3)、15%が酪酸(C4)とされています。これらの短鎖脂肪酸自体や食物繊維はGLP-1やペプタイドYYの分泌を刺激することが知られています。
短鎖脂肪酸は、局所で栄養源になるほか、G蛋白共役受容体(GPR)を活性化させ細胞機能に影響します。GPR43はC2、C3、GPR41はC3-C5短鎖脂肪酸に親和性が高いとされています。今回の研究ではGqと共役したGPR43が短鎖脂肪酸によるGLP-1分泌促進に関与していることが示されました。すでにGPR119が膵β細胞と消化管L細胞に存在し、長鎖脂肪酸のインスリン、およびGLP-1分泌促進作用を仲介することが判明しており、数々の新薬が開発中です。また、短鎖脂肪酸によるGPR43活性化は潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患にも関与していることが示されています。さらに、GPR43、GPR41は脂肪細胞にも存在し、その機能に影響することも知られています。なお、論文中でこのグループがGPR43、GPR41が膵β、α細胞にも存在することを見出したと記されています。
prebioticsを含む食品、腸管微生物(probiotics)に関する研究には今後とも注目が必要と考えられます。
by kamikubo_clinic
| 2012-01-15 17:50
| 脂質