2012年 10月 22日
αリノレン酸と心血管疾患リスク:システマティックレビューとメタ解析 |
α-Linolenic acid and risk of cardiovascular disease: a systematic review and meta-analysis
An Pan, Mu Chen, Rajiv Chowdhury, Jason HY Wu, Qi Sun, Hannia Campos, Dariush Mozaffarian, and Frank B Hu
AJCN. First published ahead of print October 17, 2012 as doi: 10.3945/ajcn.112.044040.
魚介類のn3多価不飽和脂肪酸、特にEPAとDHAが冠動脈疾患に対し保護的効果を持つ可能性は多くの研究によって支持されています。しかし、植物性n3多価不飽和脂肪酸であるαリノレン酸(ALA)が心血管疾患に対しどのように影響するかに関しては研究が多くありません。魚介類に由来するn3多価不飽和脂肪酸に比し、植物に由来するALAは世界中で入手が容易であり、ALAが心血管疾患リスクを低下させるかどうかは公衆衛生学的に重要な問題です。今回、現在までに報告されている観察研究をまとめたメタ解析が報告されました。
背景・目的: 植物性n3脂肪酸であるαリノレン酸(ALA)と心血管病リスクとの関連に関しては一致した結果が得られていないため、今回、メタ解析を行った。
デザイン: ALAの摂取量、および、血中あるいは脂肪組織中のALAマーカーと心血管病発症との関連を検討した研究を対象とした。最低摂取量に比し最高摂取量でのリスクを、多変量で調整し、求めた。
結果: 27個の研究を同定し、対象者は251,049人、心血管イベントは15,327件であった。全体として相対危険度は0.86(95% CI: 0.77-0.97)であった。摂取量による解析では相対危険度は0.90(95% CI: 0.81-0.99)で、ALAバイオマーカーによる解析では有意ではないが同様の結果が得られた(RR0.80; 95% CI:0.63-1.03)。年齢やアウトカムの種類(冠動脈疾患、脳卒中など)によっては結果は異ならなかった。
結論: 観察研究では、ALAの摂取は心血管病リスクの軽度低下と関連していた。しかしながら、研究による差が大きく、今後、よくデザインされた観察研究や大規模な無作為介入研究が望まれる。
解説> 摂取したALAは速やかに酸化され、EPAに変換されるのは10%以下とされています。また、ALA自体が心血管病リスクに対してどのような直接的効果を及ぼすかについても詳細は不明です。ALAの摂取量は他の多価不飽和脂肪酸(n6やEPA、DHA)と相関しますので、いずれが心血管疾患に対し影響を及ぼしているかの判定は容易ではありません。やはり、今後、大規模な無作為介入研究が行われなければならないでしょう。
An Pan, Mu Chen, Rajiv Chowdhury, Jason HY Wu, Qi Sun, Hannia Campos, Dariush Mozaffarian, and Frank B Hu
AJCN. First published ahead of print October 17, 2012 as doi: 10.3945/ajcn.112.044040.
魚介類のn3多価不飽和脂肪酸、特にEPAとDHAが冠動脈疾患に対し保護的効果を持つ可能性は多くの研究によって支持されています。しかし、植物性n3多価不飽和脂肪酸であるαリノレン酸(ALA)が心血管疾患に対しどのように影響するかに関しては研究が多くありません。魚介類に由来するn3多価不飽和脂肪酸に比し、植物に由来するALAは世界中で入手が容易であり、ALAが心血管疾患リスクを低下させるかどうかは公衆衛生学的に重要な問題です。今回、現在までに報告されている観察研究をまとめたメタ解析が報告されました。
背景・目的: 植物性n3脂肪酸であるαリノレン酸(ALA)と心血管病リスクとの関連に関しては一致した結果が得られていないため、今回、メタ解析を行った。
デザイン: ALAの摂取量、および、血中あるいは脂肪組織中のALAマーカーと心血管病発症との関連を検討した研究を対象とした。最低摂取量に比し最高摂取量でのリスクを、多変量で調整し、求めた。
結果: 27個の研究を同定し、対象者は251,049人、心血管イベントは15,327件であった。全体として相対危険度は0.86(95% CI: 0.77-0.97)であった。摂取量による解析では相対危険度は0.90(95% CI: 0.81-0.99)で、ALAバイオマーカーによる解析では有意ではないが同様の結果が得られた(RR0.80; 95% CI:0.63-1.03)。年齢やアウトカムの種類(冠動脈疾患、脳卒中など)によっては結果は異ならなかった。
結論: 観察研究では、ALAの摂取は心血管病リスクの軽度低下と関連していた。しかしながら、研究による差が大きく、今後、よくデザインされた観察研究や大規模な無作為介入研究が望まれる。
解説> 摂取したALAは速やかに酸化され、EPAに変換されるのは10%以下とされています。また、ALA自体が心血管病リスクに対してどのような直接的効果を及ぼすかについても詳細は不明です。ALAの摂取量は他の多価不飽和脂肪酸(n6やEPA、DHA)と相関しますので、いずれが心血管疾患に対し影響を及ぼしているかの判定は容易ではありません。やはり、今後、大規模な無作為介入研究が行われなければならないでしょう。
by kamikubo_clinic
| 2012-10-22 14:17
| 脂質