2012年 03月 12日
アフリカ系アメリカ人においてCD36の遺伝子多型は口腔脂肪感知、脂肪嗜好および肥満に関連している |
Common Variants in the CD36 Gene Are Associated With Oral Fat Perception, Fat Preferences, and Obesity in African Americans
Kathleen L. Keller, Lisa C.H. Liang, Johannah Sakimura, Daniel May, Christopher van Belle, Cameron Breen, Elissa Driggin, Beverly J. Tepper, Patricia C. Lanzano, Liyong Deng and Wendy K. Chung
Obesity (2012) advance online publication 12 January 2012 doi:10.1038/oby.2011.374
はじめに
高脂肪食摂取は肥満と関連しており、果物、野菜の摂取を増加し、総脂肪摂取を減ずる生活習慣改善は健康リスクの低減に関連している。しかし、脂肪の嗜好に関する因子には不明の点が多い。また、脂肪の嗜好や摂取に関しては個人差が大きい。
脂肪、とりわけ脂肪酸は味覚として感知される。動物は嗅覚や食物の粘度などを取り除いても、脂肪酸と対照物を区別することができ、ヒトも様々な脂肪酸を区別することが可能である。これらのことからヒトにおいても脂肪検出に関わる味覚系の存在が示唆される。
現在までに注目をあびた口腔の脂肪センサーはCD36である。CD36は分子量88000の膜結合型蛋白質であり、免疫、炎症、リポ蛋白質代謝など様々な機能を担っている。また、長鎖脂肪酸の細胞膜内への移送にも関与し、心血管疾患、メタボリックシンドロームなどのリポ蛋白質代謝異常との関連が報告されている。CD36は味覚細胞にも存在し脂肪酸の検出に関与している可能性が考えられるが、その機序は不明である。
CD36は脂肪酸の検出のみならず、中性脂肪の嗜好にも関与していることが示唆されている。
今回の研究の主目的はCD36のSNP(single nucleotide polymorphism)がアフリカ系米国人の脂肪感知および脂肪嗜好と関連しているか否かを検討することである。合わせて、肥満との関連も検討する。
抄録: 動物実験ではCD36(脂肪酸移送酵素)が脂肪検出および脂肪嗜好に関与していることが示されているが、ヒトにおいては報告がない。今研究の目的はCD36の遺伝子変異がイタリアンサラダドレッシングの口腔内での脂肪感知に関連しているか、また、自己申告による高脂肪食の受容性、および、肥満と関連しているかをアフリカ系米国人で調査することである。脂肪含有量が5%、35%および55%のサラダドレッシングの油性、脂肪含量およびクリーム性をどのように自覚的に感知するかを評価した。3種の遺伝子多型rs1761667、rs3840546、rs1527483が結果と関連していた。rs1761667のA/A遺伝子型はサラダドレッシングの脂肪含量によらず、より多くクリーム性を感知し(P<0.01)、より多くの脂肪を許容できた(P=0.02)。また、rs1527483のC/TあるいはT/T遺伝子型は、より多く脂肪を感知した(P=0.03)。さらに、rs3840546欠損ホモ接合体は、ヘテロ接合体や非欠損ホモ接合体に比し、有意にBMI、腹囲が大きかった。ただ、欠損ホモ接合体は2名しか存在せず、今後の確認が必要である。今研究によりCD36の遺伝子変異と脂肪摂取の関連が初めて明らかになった。
解説> CD36は長鎖脂肪酸に対し親和性を有し、様々な機能を発揮しています。既にマウスにおいて脂肪酸の味を味蕾のCD36が感知し、脂肪の嗜好に関与していることが示されていました(J. Clin. Invest. 115:3177–3184 (2005))。舌上皮のリパーゼで中性脂肪が分解され、CD36で認識されると考えられています。なお、脂肪酸の味覚にはGPR40およびGPR120の関与も示されています(J Neurosci, 2010 30(25):8376–8382)。
Kathleen L. Keller, Lisa C.H. Liang, Johannah Sakimura, Daniel May, Christopher van Belle, Cameron Breen, Elissa Driggin, Beverly J. Tepper, Patricia C. Lanzano, Liyong Deng and Wendy K. Chung
Obesity (2012) advance online publication 12 January 2012 doi:10.1038/oby.2011.374
はじめに
高脂肪食摂取は肥満と関連しており、果物、野菜の摂取を増加し、総脂肪摂取を減ずる生活習慣改善は健康リスクの低減に関連している。しかし、脂肪の嗜好に関する因子には不明の点が多い。また、脂肪の嗜好や摂取に関しては個人差が大きい。
脂肪、とりわけ脂肪酸は味覚として感知される。動物は嗅覚や食物の粘度などを取り除いても、脂肪酸と対照物を区別することができ、ヒトも様々な脂肪酸を区別することが可能である。これらのことからヒトにおいても脂肪検出に関わる味覚系の存在が示唆される。
現在までに注目をあびた口腔の脂肪センサーはCD36である。CD36は分子量88000の膜結合型蛋白質であり、免疫、炎症、リポ蛋白質代謝など様々な機能を担っている。また、長鎖脂肪酸の細胞膜内への移送にも関与し、心血管疾患、メタボリックシンドロームなどのリポ蛋白質代謝異常との関連が報告されている。CD36は味覚細胞にも存在し脂肪酸の検出に関与している可能性が考えられるが、その機序は不明である。
CD36は脂肪酸の検出のみならず、中性脂肪の嗜好にも関与していることが示唆されている。
今回の研究の主目的はCD36のSNP(single nucleotide polymorphism)がアフリカ系米国人の脂肪感知および脂肪嗜好と関連しているか否かを検討することである。合わせて、肥満との関連も検討する。
抄録: 動物実験ではCD36(脂肪酸移送酵素)が脂肪検出および脂肪嗜好に関与していることが示されているが、ヒトにおいては報告がない。今研究の目的はCD36の遺伝子変異がイタリアンサラダドレッシングの口腔内での脂肪感知に関連しているか、また、自己申告による高脂肪食の受容性、および、肥満と関連しているかをアフリカ系米国人で調査することである。脂肪含有量が5%、35%および55%のサラダドレッシングの油性、脂肪含量およびクリーム性をどのように自覚的に感知するかを評価した。3種の遺伝子多型rs1761667、rs3840546、rs1527483が結果と関連していた。rs1761667のA/A遺伝子型はサラダドレッシングの脂肪含量によらず、より多くクリーム性を感知し(P<0.01)、より多くの脂肪を許容できた(P=0.02)。また、rs1527483のC/TあるいはT/T遺伝子型は、より多く脂肪を感知した(P=0.03)。さらに、rs3840546欠損ホモ接合体は、ヘテロ接合体や非欠損ホモ接合体に比し、有意にBMI、腹囲が大きかった。ただ、欠損ホモ接合体は2名しか存在せず、今後の確認が必要である。今研究によりCD36の遺伝子変異と脂肪摂取の関連が初めて明らかになった。
解説> CD36は長鎖脂肪酸に対し親和性を有し、様々な機能を発揮しています。既にマウスにおいて脂肪酸の味を味蕾のCD36が感知し、脂肪の嗜好に関与していることが示されていました(J. Clin. Invest. 115:3177–3184 (2005))。舌上皮のリパーゼで中性脂肪が分解され、CD36で認識されると考えられています。なお、脂肪酸の味覚にはGPR40およびGPR120の関与も示されています(J Neurosci, 2010 30(25):8376–8382)。
by kamikubo_clinic
| 2012-03-12 22:22
| 脂質