2012年 01月 14日
過食時の食事蛋白質量が体重、エネルギー消費、体組成におよぼす影響 無作為化比較試験 |
Effect of Dietary Protein Content on Weight Gain, Energy Expenditure, and Body Composition During Overeating A Randomized Controlled Trial
George A. Bray, Steven R. Smith, Lilian de Jonge, Hui Xie, Jennifer Rood, Corby K. Martin, Marlene Most, Courtney Brock, Susan Mancuso, Leanne M. Redman
JAMA. 2012;307(1):47-55.
内容: ヒトにおいて、過食の際の栄養素配分が体重やエネルギー消費にどのような影響を及ぼすかは明らかではない。
目的: 低、中、高蛋白質食の過食が、体重増加、エネルギー消費、および、体組成にどのような影響を及ぼすかを検討する。
デザイン、設定、参加者: 25名の健常米国人、18~35歳、BMI19~30を対象に無作為化対照試験を行った。2005年6月から2007年10月までの間に入院にて検討した。
介入: 13~25日間体重安定化食を摂取した後、無作為に約40%(平均954kcal/日)エネルギーを増加させた、5%(低)、15%(中)、25%(高)蛋白質食を8週間にわたり摂取させた。
測定: 体組成はDEXA(二重エネルギーX線吸収測定法)法で、安静時エネルギー消費量は呼気分析法で、総エネルギー消費量は二重標識水法で測定した。
結果: 低蛋白質食では体重増加は平均3.16kgで、中蛋白質食での6.05kg、高蛋白質食での6.51kgに比し有意に少なかった。体脂肪は3群において同様に増加し(3.51kg)、過剰に蓄積されたカロリーの50~90%以上を占めた。低蛋白質食では安静時エネルギー消費量、総エネルギー消費量、および、体蛋白質量(-0.70kg)は増加しなかった。一方、安静時エネルギー消費量は中蛋白質食で平均160kcal/日、高蛋白質食で227kg/日増加し、体蛋白質量も中蛋白質食で平均2.87kg、高蛋白質食で3.18kg増加した。
結論: 管理された状況下では、エネルギー摂取量は体脂肪の増加量を規定する。一方、蛋白質摂取量はエネルギー消費量や除脂肪体重に影響を及ぼすが、体脂肪量には影響しない。
解説> 肥満はエネルギー摂取量の増加や運動量低下によるエネルギー消費量の減少により生じます。1999年Stockらは蛋白質摂取量が通常よりも少なすぎても多すぎても、体重の増加がエネルギー摂取量の増加に見合ったものより少なくなるとの仮説を提唱しています(Stock MJ et al. Int J Obes Relat Metab Disord.1999;23:1105-1117)。この仮説が該当するなら、栄養素バランスが偏ってしまった場合に、不必要な体重増加を避けることができるため、進化の過程で有利になる、としているようです。今回の研究はこのStockらの説を直接検証しようとしたものです。
この研究では3群とも過剰なエネルギー摂取量は同程度であり、体脂肪量も同程度に増加しましたが、体蛋白質量の増加が異なったために、低蛋白質食群では体重増加が少なくなっていました。実際、低蛋白質食群では体蛋白質量がわずかながら減少し、過剰なエネルギーの供給のみでは体蛋白質を保持することができないという結果です。また、中および高蛋白質食群では体蛋白質量が増加することで安静時エネルギー消費量が増加したと考えられます。
なお、今回の研究では、蛋白質量に応じて脂肪量を変化させることで、摂取エネルギー量をコントロールしていますので、低蛋白質食は高脂肪食となっています。脂肪酸の差異により、その生理活性が異なることが知られています。エネルギー調整に使用した脂肪の質も、結果に影響しうるものではないかと考えられます。
George A. Bray, Steven R. Smith, Lilian de Jonge, Hui Xie, Jennifer Rood, Corby K. Martin, Marlene Most, Courtney Brock, Susan Mancuso, Leanne M. Redman
JAMA. 2012;307(1):47-55.
内容: ヒトにおいて、過食の際の栄養素配分が体重やエネルギー消費にどのような影響を及ぼすかは明らかではない。
目的: 低、中、高蛋白質食の過食が、体重増加、エネルギー消費、および、体組成にどのような影響を及ぼすかを検討する。
デザイン、設定、参加者: 25名の健常米国人、18~35歳、BMI19~30を対象に無作為化対照試験を行った。2005年6月から2007年10月までの間に入院にて検討した。
介入: 13~25日間体重安定化食を摂取した後、無作為に約40%(平均954kcal/日)エネルギーを増加させた、5%(低)、15%(中)、25%(高)蛋白質食を8週間にわたり摂取させた。
測定: 体組成はDEXA(二重エネルギーX線吸収測定法)法で、安静時エネルギー消費量は呼気分析法で、総エネルギー消費量は二重標識水法で測定した。
結果: 低蛋白質食では体重増加は平均3.16kgで、中蛋白質食での6.05kg、高蛋白質食での6.51kgに比し有意に少なかった。体脂肪は3群において同様に増加し(3.51kg)、過剰に蓄積されたカロリーの50~90%以上を占めた。低蛋白質食では安静時エネルギー消費量、総エネルギー消費量、および、体蛋白質量(-0.70kg)は増加しなかった。一方、安静時エネルギー消費量は中蛋白質食で平均160kcal/日、高蛋白質食で227kg/日増加し、体蛋白質量も中蛋白質食で平均2.87kg、高蛋白質食で3.18kg増加した。
結論: 管理された状況下では、エネルギー摂取量は体脂肪の増加量を規定する。一方、蛋白質摂取量はエネルギー消費量や除脂肪体重に影響を及ぼすが、体脂肪量には影響しない。
解説> 肥満はエネルギー摂取量の増加や運動量低下によるエネルギー消費量の減少により生じます。1999年Stockらは蛋白質摂取量が通常よりも少なすぎても多すぎても、体重の増加がエネルギー摂取量の増加に見合ったものより少なくなるとの仮説を提唱しています(Stock MJ et al. Int J Obes Relat Metab Disord.1999;23:1105-1117)。この仮説が該当するなら、栄養素バランスが偏ってしまった場合に、不必要な体重増加を避けることができるため、進化の過程で有利になる、としているようです。今回の研究はこのStockらの説を直接検証しようとしたものです。
この研究では3群とも過剰なエネルギー摂取量は同程度であり、体脂肪量も同程度に増加しましたが、体蛋白質量の増加が異なったために、低蛋白質食群では体重増加が少なくなっていました。実際、低蛋白質食群では体蛋白質量がわずかながら減少し、過剰なエネルギーの供給のみでは体蛋白質を保持することができないという結果です。また、中および高蛋白質食群では体蛋白質量が増加することで安静時エネルギー消費量が増加したと考えられます。
なお、今回の研究では、蛋白質量に応じて脂肪量を変化させることで、摂取エネルギー量をコントロールしていますので、低蛋白質食は高脂肪食となっています。脂肪酸の差異により、その生理活性が異なることが知られています。エネルギー調整に使用した脂肪の質も、結果に影響しうるものではないかと考えられます。
by kamikubo_clinic
| 2012-01-14 15:25
| 蛋白質